イスや低い台で安全に!『登る・降りる』に挑戦するおうち運動遊び 体の使い方とバランス感覚を育む 1歳頃〜2歳半向け
初めての育児では、お子さんとの遊び方に悩んだり、準備や片付けが大変に感じたりすることがあるかもしれません。特別な道具を使わなくても、おうちにある身近なもので、お子さんの成長を促しながら親子で楽しく触れ合える運動遊びはたくさんあります。
今回は、お子さんの体の使い方やバランス感覚の発達に役立つ、「登る・降りる」という動きに焦点を当てた室内運動遊びをご紹介します。安全に配慮しながら、お子さんのペースに合わせてゆっくりと進めてみましょう。
『登る・降りる』遊びで育む力とは
お子さんにとって、「登る」「降りる」という動きは、全身の筋肉を使い、体のバランスを取りながら行う、重要な基本的な運動です。この遊びを通じて、以下のような様々な発達が期待できます。
- 身体能力の発達:
- 粗大運動能力: 体全体を使った大きな動き、特に足腰の筋力や体の支持力を養います。
- バランス感覚: 高いところに登ったり、降りる際に不安定な体勢を立て直したりすることで、バランス感覚が養われます。
- 体の使い方: どのくらいの力で、どの足をどこに置けば安全に登れるか、降りられるかなど、自分の体をコントロールする能力が向上します。
- 感覚の発達:
- 固有受容覚(こゆうじゅようかく): 手足や体の位置、動き、力の入れ具合などを感じる感覚です。段差を乗り越える際に、足の裏で高さを感じたり、体を支える腕の力を調整したりすることで刺激されます。
- 前庭感覚(ぜんていかんかく): バランスや体の傾き、スピードなどを感じる感覚です。登り降りの際の体の移動や、少し不安定な場所でのバランス取りで刺激されます。
- 認知能力の発達:
- 高さや奥行きを認識する空間認識能力が育まれます。
- 精神・社会性の発達:
- 「できた!」という達成感は、お子さんの自信に繋がります。
- 保護者の方に見守られ、励まされながら挑戦することで、安心感や信頼感が深まります。
- 難しいことにも挑戦しようとする意欲が育まれます。
対象となるおおよその年齢
この遊びは、1歳頃〜2歳半頃のお子さんにおすすめです。
伝い歩きが安定してきたり、あんよが上手になってきたりする頃から、お子さんは身の周りの段差(ラグの端、少しの段差、階段など)に興味を持ち始めます。まずは低い段差から始め、お子さんの発達や興味に合わせて難易度を調整してください。
遊びを始めるために準備するもの
特別な道具は必要ありません。おうちにある、安全で安定した「低い段差」になるものを用意しましょう。
- 低いイス: お子さんの身長に対して低く、安定感のあるもの。
- 座布団やクッション: 硬めの座布団や、いくつかのクッションを重ねて少し高さを作ります。柔らかすぎるものは不安定になるため避けましょう。
- 絵本や厚みのある本: 滑りにくいように複数冊重ねて固定します。
- 低い台や箱: お子さんが安全に上り下りできる高さと安定性があるもの。
注意点: 段差が滑りやすかったり、不安定だったりしないか必ず確認してください。また、お子さんが怪我をする可能性がある硬い角がないかどうかも確認しましょう。
具体的な遊び方のステップ
お子さんの様子を見ながら、ゆっくりと進めていきましょう。
- 安全な場所を選ぶ: 滑りにくい床の上で、周りに硬いものや危険なものがない広いスペースを選びます。壁の近くなど、体を支えやすい場所も良いでしょう。
- 段差を用意する: 用意したもので、お子さんが無理なく手や膝をついて登れるくらいの、低い段差(5cm〜15cm程度)を作ります。最初はより低い段差から始めると良いでしょう。
- 保護者の方が手本を見せる: 保護者の方が実際に段差を「登って」「降りて」みせます。「よいしょ」「ぺったん」など、動きに合わせた声かけをしながら行うと、お子さんも興味を持ちやすくなります。
- お子さんと一緒に挑戦する: お子さんの後ろや横に立ち、いつでも支えられるように見守ります。お子さんが段差に近づいてきたら、「ここを登ってみようか」「よいしょ」と優しく声をかけます。必要であれば、お子さんの手を取ったり、お尻を支えたりして補助します。
- 『登る』をサポート: お子さんが段差に手をついたり、足をかけたりしようとしたら、「上手だね」「もう少し」と励まします。もし難しそうであれば、少し持ち上げたり、足の位置をサポートしたりして、成功体験ができるように手伝います。
- 『降りる』をサポート: 登れたら、次は降りる練習です。「次は下りるよ」「ゆっくりね」と声をかけ、前に手をつかせたり、足の位置を教えてあげたりしながら、安全に降りられるように支えます。
- 繰り返し楽しむ: 慣れてきたら、繰り返し登り降りを楽しみます。声かけや歌(例えば、「のぼりぼう」の歌を「のぼって おりて」にアレンジするなど)を交えながら行うと、より楽しくなります。
- 難易度を調整する: お子さんが簡単そうにできるようになったら、少しだけ段差を高くしてみたり、手すりなどのない場所(もちろん安全を確保した上で)でバランスを取りながら挑戦させたりと、徐々に難易度を上げていきます。ただし、決して無理強いはしないでください。
遊び中の子どもとの関わり方のヒント
- 声かけで動きを促す: 「よいしょ」「とことこ」「ストン」「ゆっくりね」など、動きに合わせた言葉で応援しましょう。
- 成功体験を褒める: 段差を一つ乗り越えられたら、「できたね!すごい!」「頑張ったね!」と、過程や努力を具体的に褒めてあげます。
- 一緒に楽しむ姿勢: 保護者の方も笑顔で、一緒に楽しむ様子を見せることで、お子さんも安心して取り組めます。
- 焦らせない: お子さんのペースを尊重し、無理強いは絶対にしないでください。嫌がったり疲れたりしている様子が見られたら、すぐに休憩するか、別の遊びに切り替えましょう。
- 安全を見守る: 何よりも安全第一です。お子さんから目を離さず、いつでも手助けできる距離で見守ってください。
安全に遊ぶための注意点
- 場所の安全性: 周囲に硬い家具の角やぶつかる危険のあるものがないか確認してください。床がフローリングの場合は、滑り止めマットなどを敷くとより安全です。
- 段差の安全性: 使用するものがグラつかないか、安定しているか必ず確認してください。角が鋭利なもの、壊れやすいものは使用しないでください。
- お子さんの服装: 動きやすく、滑りにくい靴下や靴を履かせてください。裾の長い服や装飾が多い服は引っかかる可能性があるため避けましょう。
- お子さんの状態: 眠い時、お腹が空いている時、機嫌が悪い時などは無理に行わず、お子さんの体調や気持ちに寄り添ってください。
- 常に目を離さない: お子さんは予測できない動きをすることがあります。遊び中は決して目を離さず、すぐに手助けできる状態で見守ってください。
遊びの準備や片付けを簡単にする工夫
この遊びで使うものは、普段おうちで使っている座布団やクッション、絵本などです。そのため、特別な準備はほとんど必要なく、遊びが終わったら元の場所に戻すだけなので、片付けもとても簡単です。育児や家事で忙しい中でも、気軽に取り入れやすい遊びです。
まとめ
「登る・降りる」というシンプルな運動遊びは、お子さんの体の基本的な使い方、バランス感覚、そして挑戦する心を育む素晴らしい機会になります。何よりも大切なのは、安全を確保しながら、お子さんが「楽しい」「できた」と感じられるように、保護者の方が温かく見守り、一緒に楽しむことです。
身近なものを活用して、今日からぜひお子さんと一緒に「登る・降りる」運動遊びに挑戦してみてください。遊びを通じて深まる親子の触れ合いは、お子さんの健やかな成長にとってかけがえのない宝物になるはずです。