おうちにある箱や袋で楽しむ『入れる・出す』遊び 微細運動と全身の協調性を育む 1歳頃〜2歳半向け
はじめに
お子様との毎日の遊びについて、どのように取り入れたら良いか、特別な準備が必要なのかと悩まれることはありませんか。特に小さなお子様との遊びは、安全に配慮しつつ、心身の発達を促せるような内容を選びたいものです。
ここでは、ご家庭にある身近なもの、具体的には「箱」や「袋」を使った簡単な運動遊びをご紹介します。これらの遊びは、「入れる」「出す」というシンプルな動作を中心に展開し、お子様の手先の器用さ(微細運動)や、体全体の動きを調整する力(全身の協調性)を無理なく育むことができます。
準備も片付けも簡単で、お子様の成長段階に合わせて様々なバリエーションが楽しめます。ぜひ、親子の温かい触れ合いの時間として取り入れてみてください。
対象となるおおよその年齢・月齢
この遊びは、自分で物を掴み、持つことができるようになる1歳頃から、簡単な指示が理解できるようになり、より複雑な動作にも挑戦し始める2歳半頃までのお子様におすすめです。お子様の発達には個人差がありますので、無理強いせず、興味を示した時に始めるのが良いでしょう。
遊びを始めるために準備するもの
特別な道具は一切必要ありません。ご家庭にある以下のものを準備してください。
- 様々な大きさや形の箱:
- 段ボール箱(大小どちらでも)
- 菓子箱や靴箱
- 空き容器(プラスチック製など)
- 袋:
- 紙袋
- エコバッグや布袋
- (破れにくい)レジ袋
- 「入れるもの」:
- ボール(柔らかいもの)
- 積み木
- タオルやハンカチ
- 大きめのおもちゃ
- 新聞紙を丸めたものなど、お子様が安全に掴めて、誤飲の心配がない大きさのものを選んでください。
具体的な遊び方のステップ
「入れる」「出す」という基本の動作から始め、お子様の発達に合わせて少しずつ変化をつけてみましょう。
- 基本の「入れる」:
- いくつか箱や袋を用意し、「入れるもの」を近くに置きます。
- 親が「これ(〇〇)を箱(袋)に入れてみようね」と声をかけながら、実際に入れるところをお子様に見せます。
- 次にお子様に「〇〇さんも入れてごらん」と促します。
- お子様が自分から入れたり、親の真似をして入れたりできたら、「わあ、入ったね!」「上手だね!」と具体的に褒め、一緒に喜びましょう。
- 基本の「出す」:
- 箱や袋に入ったものを見て、「中から出してごらん」と声をかけます。
- お子様が自分で出せたら、「全部出せたね!」「すごいね!」と成果を認めて褒めてあげましょう。
- 色々な箱や袋で試す:
- 大きな箱にたくさんのものを入れる、小さな箱にぴったり収まるものを入れるなど、箱や袋の大きさや形を変えてみます。
- 紙袋のように口を広げたり、布袋のように手で開けたりと、袋の扱い方の違いも体験できます。
- 全身を使った「運ぶ」:
- 少し大きめの箱や袋に「入れるもの」を入れ、それを「あそこに運んでみようか」と促し、一緒に移動します。箱を抱えたり、引きずったり、全身を使って物を運ぶ経験になります。
- 箱を少し離れた場所に置いて、「これを入れてきてくれるかな?」と、物を拾って箱まで運ぶリレー形式にしても楽しいです。
- 微細運動を促す「狙う」:
- 口が狭い容器(ペットボトルやタッパーなど、安全なもの)を用意し、それに入るサイズの小さめのもの(ビーズなどではなく、ある程度大きさがある安全なもの)を入れさせてみます。指先でつまんだり、穴を狙ったりする動作が、より細かい微細運動の発達を促します。
- 「隠す・探す」遊び:
- 複数の箱や袋を用意し、お子様の目の前で一つの箱(袋)に何かを入れ、他の箱も触るなどして、どれに入っているか「探してみよう!」と促します。物の永続性(見えなくなっても存在すること)の理解や、記憶力の発達につながります。
遊びを通じて期待できる効果
このシンプルな「入れる・出す」遊びには、お子様の発達にとって様々な有益な効果が期待できます。
- 微細運動の発達: 物を指先で掴む、持つ、離す、入れる、出すといった一連の動作は、手や指、手首の筋肉や神経の発達を促します。スプーンや鉛筆を使うための基礎となる重要な動きです。
- 全身の協調性: 大きな箱を運ぶ、物を拾うためにしゃがむ、立ち上がる、箱の前に移動するなど、遊びの中で自然に全身の動きが連動し、調整力が養われます。
- 空間認識能力: 物が箱や袋という「空間」の中に収まること、どれくらいの大きさのものがどれくらいの空間に入るかといった感覚を体験的に学びます。
- 集中力と持続力: 好きな遊びを見つけると、お子様は繰り返し同じ動作をしたがります。これは集中力や、一つのことに取り組む持続力を育む大切な機会です。
- 達成感と自信: 「自分で入れた!」「全部出せた!」といった成功体験を重ねることで、達成感が得られ、自己肯定感や自信につながります。
- 親子のコミュニケーション促進: 親の言葉を聞き、真似し、一緒に取り組む中で、言葉の理解が進み、信頼関係や愛着が深まります。
遊び中の子どもとの関わり方のヒント
お子様との運動遊びは、何かが「できるようになる」ことだけが目的ではありません。一緒に過ごす時間そのものが宝物です。
- 結果よりもプロセスを褒める: 上手に入れられなくても、「箱を見つけたね」「持ってみたんだね」など、お子様の行動そのものに注目して声をかけましょう。
- 「見ててね」と声をかける: 親が楽しそうに遊んでいる姿を見せることで、お子様も興味を持ちやすくなります。
- 簡単な言葉で具体的に: 「これ」「あれ」だけでなく、「赤いボールをこの箱に入れてみよう」のように、物の名前や色、場所などを具体的に伝えることで、言葉の理解を促します。
- 無理強いはしない: お子様が遊びに飽きたり、興味を示さなかったりする場合は、潔く切り上げましょう。また別の機会に誘ってみてください。
- 一緒に楽しむ姿勢を見せる: 親が笑顔で一緒に遊ぶことが、お子様にとって何よりの喜びであり、遊びを楽しいものだと感じさせる一番の方法です。
安全に遊ぶための注意点
楽しく安全に遊ぶために、いくつかの点に注意してください。
- 「入れるもの」の確認: お子様が口に入れても安全で、誤飲の心配がない大きさ・素材のものを選んでください。小さなボタンや取れる可能性のある飾りなどがついたおもちゃは避けましょう。
- 箱や袋の状態を確認: 段ボールの角が鋭利になっていないか、ホッチキスの針が出ていないか、破れていないかなどを確認します。プラスチック容器の場合は割れがないか確認してください。
- 安全な場所で行う: 周囲に角のある家具や、倒れてくる可能性があるものがない、十分な広さのある場所を選んでください。
- 保護者の方の監視下で行う: 遊び中は、常にお子様から目を離さないようにしてください。
遊びの準備や片付けを簡単にする工夫
この遊びは、準備も片付けも非常に簡単です。
- 使うものを限定する: 最初は数種類の「入れるもの」と箱や袋一つから始めましょう。
- 「片付けも遊びに」: 遊びの最後に「全部この箱にお片付けしようね」と声をかけ、一緒に入れる動作を片付けにつなげます。箱や袋自体が物の収納場所にもなります。
- すぐに取り出せる場所に置く: よく遊ぶ箱や袋、入れるものは、お子様の手の届く場所や、親がすぐに取り出せる場所にまとめて置いておくと、いつでも気軽に遊び始められます。
まとめ
「入れる」「出す」という日常的な動作を遊びにすることで、お子様は楽しみながら手先の器用さや全身の動き、そして目と手の協調性などを育んでいきます。高価なおもちゃや特別な場所は必要ありません。ご家庭にある身近な箱や袋、そしてお子様への温かい声かけがあれば、親子の楽しい運動遊びの時間が生まれます。
この遊びを通じて、お子様の「できた!」という笑顔をたくさん引き出し、親子の絆を一層深めていただけたら幸いです。お子様の「やってみたい」という気持ちを大切に、ぜひ試してみてください。