身近なもので楽しむ『たたく・鳴らす』親子運動あそび 聴覚とリズム感、体の使い方を育む 1歳半頃から3歳向け
はじめに
初めての育児では、お子様との時間をどのように過ごしたら良いか、どのような遊びがお子様の成長に繋がるのか、といった疑問をお持ちになることがあるかもしれません。特別な道具や広い場所がなくても、お子様と一緒に楽しく身体を動かし、感覚を育む遊びはたくさんあります。
この記事では、ご家庭にある身近なものを活用して楽しめる「たたく・鳴らす」運動遊びをご紹介します。この遊びは、お子様の聴覚やリズム感、手先や体の使い方を育むだけでなく、親子のコミュニケーションを深める時間にもなります。
「たたく・鳴らす」親子運動あそびとは
この遊びは、おうちにある安全なものを使って、お子様と一緒に叩いたり、振ったりして音を鳴らすことを通じて、様々な感覚や身体能力を育む運動遊びです。お子様の成長段階に合わせて、遊び方を工夫することで、さらに多様な学びを得ることができます。
対象となるおおよその年齢・月齢
1歳半頃から3歳頃までのお子様におすすめです。この時期は、手先を器用に使えるようになり始め、音への興味が高まり、大人の模倣を楽しむようになる時期にあたります。
遊びを始めるために準備するもの
特別な道具は必要ありません。ご家庭にある安全で、叩いたり振ったりしても壊れにくく、音の鳴るものを準備します。いくつか例を挙げます。
- プラスチック製の容器(タッパーなど)
- 金属製の鍋や蓋(大人が見守りながら使用)
- 木製やプラスチック製のスプーンや菜箸(先端が丸いものを選ぶ)
- 段ボール箱や厚紙の筒
- ペットボトルに少量の豆やビーズを入れたもの(蓋をしっかり閉める)
- 新聞紙や広告紙を丸めた棒やボール
ポイントは、様々な素材や形のものを用意し、叩いた時の音や感触の違いを楽しめるようにすることです。
具体的な遊び方のステップ
いくつか遊び方の例をご紹介します。お子様の興味や反応に合わせて、自由にアレンジしてみてください。
- 音の違いを探検:
- 準備したものをいくつか床に並べます。
- お子様と一緒に、それぞれのものを指や手、またはスプーンなどで優しく叩いてみます。
- 「これはどんな音がするかな?」「こっちと違う音だね」などと声かけをしながら、それぞれの音や感触の違いに気づくよう促します。
- リズムに合わせてトントン:
- 親が一定のリズムで何かを叩き、お子様に真似してもらう遊びです。
- 最初はゆっくりとした簡単なリズムから始めます。(例: トントン、トントン)
- 慣れてきたら、少し複雑なリズムや、叩く速さを変えてみます。(例: トントンタン、トントンタン)
- お子様が自分で叩くようになったら、お子様のリズムに合わせて親も一緒に叩いてみましょう。
- 歩きながらマーチング:
- 手に持てるサイズの叩くもの(例: 新聞紙を丸めた棒とタッパーの蓋)をお子様に持たせます。
- 親が手拍子や足踏みで簡単なリズムをとりながら、お子様と一緒にその場で足踏みをしたり、短い距離を歩いたりしてみます。
- 「いち、に、いち、に」などと声をかけながら、リズムに合わせて叩くことを促します。
- 叩く強さで音の変化:
- 同じものを優しく叩いた時と、少し強く叩いた時の音の違いを体験します。
- 「そーっとトントン」「もう少し強くコンコン」などと声かけをしながら、力の入れ具合で音の大きさが変わることを知らせます。
遊びを通じて期待できる効果
- 聴覚の発達: 様々な音を聞き分けることで、聴覚の感度を高めます。
- リズム感の習得: リズムに合わせて体を動かすことで、リズム感を養います。
- 協調性と巧緻性: 手や腕を使って叩く、持つといった動作で、手先の器用さ(微細運動)や腕全体の協調性(粗大運動)が育まれます。
- 力の調整: 叩く強さを変えることで、力の入れ具合を調整する能力が養われます。
- 全身運動: 座って叩く、立って叩く、歩きながら叩くなど、様々な体勢で行うことで全身を使います。
- コミュニケーション能力: 親の真似をしたり、一緒に音を鳴らしたりすることで、非言語的なコミュニケーション能力が育まれます。
- 自己表現: 自由に音を出すことで、感情や創造性を表現する楽しさを知ります。
遊び中の子どもとの関わり方のヒント
お子様が遊びをさらに楽しめるよう、以下の点を意識して関わってみましょう。
- お子様が興味を示したものを一緒に叩いてみることから始めます。
- 親も楽しそうに音を鳴らしてみせると、お子様の興味を引きやすくなります。
- 「良い音だね」「上手に叩けたね」など、肯定的な言葉で具体的に褒めてあげます。
- お子様のペースに合わせて、無理強いせず、飽きたら別の遊びに切り替える柔軟さも大切です。
- お子様が叩いた音に合わせて、親も即興でリズムをとってみるなど、遊びを広げる工夫も楽しいものです。
安全に遊ぶための注意点
- 使用するものは、お子様が口に入れても安全な素材で、角がないものを選びます。
- 強く叩きすぎると破損する可能性のあるものや、大きな音が出すぎるものは避けるか、大人が十分に見守るようにします。特に金属製の鍋などは、耳元で大きな音を立てないよう注意が必要です。
- 遊びを行う場所は、床に物を置かず、お子様が動き回っても安全な広いスペースを確保します。
- お子様の体調や機嫌が悪い時には、無理に遊びを始めないようにしましょう。
遊びの準備や片付けを簡単にするための工夫
- この遊びで使用するものは、普段使わないものであれば、専用の箱や袋にまとめておくと、遊びたい時にすぐに取り出せます。
- 遊びが終わったら、「おもちゃさん、おうちに帰ろうね」などと声をかけ、お子様と一緒に元の場所に戻す習慣をつけるように促します。片付けも遊びの一環として捉えることで、お子様の自立心も育まれます。
まとめ
身近なものを使った「たたく・鳴らす」運動遊びは、手軽に始められながらも、お子様の聴覚やリズム感、手先の使い方など、多様な発達を促すことができる遊びです。何よりも、お子様と一緒に音を出し、リズムを共有する時間は、かけがえのない親子の触れ合いとなり、絆を深める大切な機会となります。
完璧に遊ばなければ、と気負う必要はありません。お子様の「面白いね」「楽しいね」という気持ちや、一緒に過ごす時間を大切にしながら、ぜひ日常の中に気軽に取り入れてみてください。