親が優しく引っ張る・支える親子運動あそび 体幹とバランス感覚、全身の協調性を育む 生後10ヶ月頃〜2歳半向け
初めての育児は喜びとともに、お子様との毎日をどのように過ごしたら良いかと戸惑うこともあるかもしれません。特に、限られた室内空間や特別な道具がない中で、お子様が楽しく体を動かし、成長を促す遊びを見つけることは一つの課題です。
この「親子で運動あそび広場」では、身近なものを使って手軽にできる親子運動あそびをご紹介しています。今回の記事では、親御さんが優しくお子様の体を「引っ張る」「支える」といった関わりを通じて楽しめる運動あそびを取り上げます。このような遊びは、お子様の体幹(体の中心を支える筋肉)やバランス感覚、そして全身の協調性を育むだけでなく、親子の信頼関係を深める大切な時間となります。生後10ヶ月頃から2歳半頃のお子様を対象にした、具体的な遊び方とその効果、安全に楽しむためのポイントをご紹介します。
親が優しく引っ張る・支える遊びで育む力
お子様は、様々な体の動きを通じて、自分の体の使い方を学んでいきます。親御さんがお子様の体を優しく引っ張ったり、支えたりすることで、お子様は普段使わない筋肉を意識したり、自分の体のバランスが崩れる感覚とその立て直し方を経験したりします。
この種の遊びを通じて期待できる主な効果は以下の通りです。
- 体幹の発達: 体の中心が安定することで、座る、立つ、歩くといった基本的な動作がスムーズになります。
- バランス感覚の向上: 揺れや体の傾きを感じ取ることで、バランスを取る能力が養われます。これは転倒を防いだり、複雑な動きをする上で重要です。
- 全身の協調性: 腕で親を掴んだり、足で踏ん張ったりと、全身の筋肉を連携させて使う力が育まれます。
- 固有受容覚の刺激: 体の関節や筋肉にかかる圧力や動きを感じ取る固有受容覚(体の位置や動きを把握する感覚)が刺激されます。
- 親子のコミュニケーションと信頼関係: 親御さんとの安心できるスキンシップを通じて、お子様は情緒的な安定を得られ、親子の絆が深まります。
身近なものでできる「引っ張る・支える」運動あそび
特別な道具は必要ありません。ご家庭にあるタオルや布、あるいは親御さんの体そのものを使って、安全に楽しく遊ぶことができます。
遊び1:タオルや布で「引っ張りっこ・ブランコ」
対象となるおおよその年齢・月齢: 生後10ヶ月頃〜2歳半頃(一人座りやハイハイが安定し、体重を支えられるようになる頃から)
準備するもの: * バスタオルや丈夫な大きめの布(薄手の布は避けてください)
具体的な遊び方: 1. 床に布を広げ、お子様を真ん中に座らせます。 2. 親御さんが布の両端を持ち、床から少しだけ持ち上げて優しく揺らします。ゆらゆらと軽いブランコのように揺らしてあげましょう。 3. お子様が布の上に立った姿勢で、親御さんが布を背中から脇の下に通して支え、両端を前に持ってきます。お子様が両手で布の端を掴めるようにします。 4. 親御さんがお子様の背中を支えながら、お子様が自分で掴んでいる布を優しく引っ張るように促します。あるいは、親御さんが布の端を持ち、お子様を布の上に乗せたまま、床の上で優しく引っ張って移動させます。 5. お子様が楽しんでいるようなら、速度や揺らし方を少しずつ変えてみても良いでしょう。
遊び中の子どもとの関わり方のヒント: * 「ゆーらゆら」「ビューン!」など、擬音語を使って楽しさを表現します。 * お子様の表情をよく見て、嫌がっていないか、怖がっていないか確認します。 * 「自分で布をギュッと持ってごらん」「ママの方に引っ張れるかな?」など、声かけで動きを促します。
安全に遊ぶための注意点: * 床が滑りにくい場所を選んでください。 * 周囲に角ばった家具や危険なものがないか確認してください。 * 布からお子様が滑り落ちないよう、常に親御さんがしっかりと支えを見守ってください。 * 急な動きや高い位置でのブランコは避け、常に床から近い位置で行ってください。
遊び2:親の体で「ぶら下がり・逆さまごっこ」
対象となるおおよその年齢・月齢: 1歳半頃〜2歳半頃(握力がつき、自分の体を支える力が少しずつ出てくる頃から)
準備するもの: * 特になし(必要に応じて、親御さんが握りやすいようにタオルや布を補助に使うこともできます)
具体的な遊び方: 1. 親御さんが床に座り、両膝を立てます。 2. お子様が親御さんの足首や膝の後ろなどを両手でしっかり握れるように促します。 3. 親御さんは体を安定させ、お子様がぶら下がるような体勢を優しく支えます。お子様の体が床から少し浮く程度に、ゆっくりと持ち上げたり揺らしたりします。 4. 慣れてきたら、親御さんが仰向けになり、足を立ててお子様をその足の上に立たせ、手を掴ませて軽く揺らしたり、足の裏を合わせるようにして短い時間だけ軽い逆さまにしてみたりするのも良いでしょう。
遊び中の子どもとの関わり方のヒント: * 「すごい力持ちだね!」「ぶーらぶら!」など、お子様の頑張りを言葉にします。 * 「もっとやりたいかな?」「もうおしまいにする?」と、お子様の意思を確認しながら進めます。 * お子様が掴んでいる手を離さないように、しっかりと声をかけながら行います。
安全に遊ぶための注意点: * 必ず親御さんがお子様の体をしっかりと支えてください。 * 高い位置で持ち上げたり、勢いよく揺らしたりしないでください。 * 逆さまにする場合は、短い時間にとどめ、お子様の首や頭に負担がかからないように十分注意してください。 * お子様が嫌がるそぶりを見せたら、すぐに遊びを中断してください。
遊び3:タオルで「おんぶ・抱っこで引っ張られっこ」
対象となるおおよその年齢・月齢: 1歳頃〜2歳半頃(おんぶや抱っこが安定し、ある程度指示が理解できるようになる頃から)
準備するもの: * バスタオルや丈夫な布
具体的な遊び方: 1. 親御さんがお子様を安定した状態でおんぶ、または抱っこします。 2. 別のバスタオルや布を、お子様が両手でしっかり握れるように持たせます。 3. 親御さんが、お子様が持っているタオルのもう一方の端を持ちます。 4. 「いくよー」と声をかけながら、親御さんがゆっくりと歩き出し、お子様が持っているタオルを優しく引っ張るように移動します。お子様は自分が引っ張られている感覚や、親御さんと一緒に動く感覚を体験します。
遊び中の子どもとの関わり方のヒント: * 「一緒に歩こうね」「引っ張られているね」など、状況を言葉にして伝えます。 * 親御さんとお子様の呼吸やペースを合わせるように意識します。 * タオルを離してしまっても、「大丈夫だよ」と優しく声をかけ、もう一度握るように促します。
安全に遊ぶための注意点: * 親御さんがバランスを崩したり、滑ったりしないように、足元に十分注意してください。 * タオルが周りの物に引っかかったり、お子様の体に絡まったりしないように注意してください。 * 無理な速度で引っ張ったり、急に止まったりしないでください。
遊びの準備や片付けを簡単にする工夫
今回ご紹介した遊びは、どれもご家庭にあるタオルや布、そして親御さんの体があればすぐに始められます。準備も片付けも簡単で、思い立った時に気軽にできるのが利点です。遊びに使ったタオルや布は、遊び終わったらたたんでいつもの場所にしまうだけで良いので、特別な手間はかかりません。
まとめ
親御さんがお子様の体を優しく「引っ張る」「支える」遊びは、お子様が自分の体を意識し、体幹やバランス感覚、全身の協調性を楽しみながら育むことができる素晴らしい機会です。また、親子の温かい触れ合いは、お子様の安心感を育み、親子の絆をより一層深めることにつながります。
遊びを通じて、お子様は様々な体の感覚を経験し、自分の体を上手に使う方法を学んでいきます。大切なのは、お子様のペースに合わせ、安全に配慮しながら、親御さん自身も遊びを楽しむことです。今日からぜひ、お子様との触れ合いの中で「引っ張る」「支える」遊びを取り入れてみてください。お子様の成長を感じながら、親子の楽しい時間をお過ごしいただけることを願っています。